第30回定例会 議事録

疾患啓発(DTC)研究会 第30回記念定例会
2026年5月27日㈬ 開催

本会設立15周年第30回記念定例会は、興和株式会社の会場提供のもと、14社34名が参加し盛況のうちに開催されました。冒頭、26年度通常総会が開催され、第1号議案の役員について、第2号議案の2025年度活動報告および会計決算報告、第3号議案の2026年度活動計画および予算案について報告と承認が行われました。その後、高橋代表理事による開会の挨拶があり、 特別講演とラウンド・テーブル・ディスカッションが実施されました。

【第一部】

  • テーマ : 患者視点で疾患啓発(DTC)から患者サポート(PSP)までを考える

特別講演1: Patient Centricityの実現に向けて ~ ミクス調査結果を踏まえた考察

株式会社ミクス 代表取締役/ミクス編集長 沼田 佳之 氏

米国ヘルステック学会(HIMSS)の事例紹介として、対話型AIが医師と患者の会話を自動で文字起こし・サマリー化し、スマホアプリへ即時共有するなど、生産性向上と患者の安心感を両立する仕組みが北米を中心に急進している。テスラ社イーロン・マスク氏の片腕であるJon McNeillが提唱した「10クリックで車を買う」手法(業務プロセスの極限までの削減・最適化)を例に、単なる「患者満足度」ではなく、患者のインサイトを細分化し、行動に寄り添った「体験の質」を設計・提供する重要性について事例紹介があった。

「製薬企業が掲げる企業理念の浸透と従業員の行動調査」において、本社(マーケティング・開発)に比べ、現場のMRほど「患者貢献」と「営利活動・プロモーションコードの制約」の間でジレンマを感じている。「患者価値の向上と短期的な売上の向上は両立できる」という設問では、内資30.4%、外資53.4%と差が顕著であり、外資はDTCに注力する傾向にあることが調査結果から示された。

国内における異業種連携(2026年5月にSMBC、富士通、ソフトバンクが発表)によるデジタルヘルスケアプラットフォームが注目されており、今後の製薬企業には、当該データの利活用を含めた異業種連携の必要性が述べられた。

特別講演2:DTC事例紹介 ~ 疾患啓発共同プロジェクトについて

疾患啓発(DTC)研究会 副代表理事 岩橋 洋平 氏

多汗症治療薬で通常はシェアを奪い合う関係にある製薬3社(マルホ、科研製薬、久光製薬)が、未受診の潜在患者を救うという共通の目的のためにリソースと原資を持ち寄った共同プロジェクトの解説があった。横軸のシェア競争でシェア奪い合うのではなく、縦軸の市場拡大へ視点をシフトさせ、疾患認知を高めて市場全体(縦軸)のパイを増やすことにより、患者視点でのDTC取り組み事例であった。患者1社単独時と比べて数倍の効果が見込まれることが示された。現在、「汗で病院、あたりまえに委員会」を呼称にひとりで抱え込んでいた汗の悩みを”あたりまえ”に相談できる社会を目指すこととしてDTC展開されている。今後、悩んでいた生活者が受診することにより、QOLが大きく改善されることが期待される

<汗で病院、あたりまえに委員会>

2026年4月に発足した、多汗症を対象とする具体的なプロジェクト事例。大規模調査「発汗白書」やDTC広告の展開により、10代を中心に「汗の悩みは我慢せず病院へ」という社会の空気の変革に挑み、広告換算費1.6億円以上の高いメディア露出を達成した。

特別講演3: 患者・医療従事者・製薬企業の視点で考えるPSPの実践

一般社団法人 ヘルスケアイノベーション協会 代表理事 大角 知也 氏

高分子医薬へのシフトや自己注射の難化、医療現場の働き方改革によるリソース不足を背景に、診断から治療継続までを一気通貫で患者を支える仕組み作りの必要性が述べられた。患者が1ヶ月の中で医師と接する「10分間」以外の膨大な日常生活の時間をターゲットにする視点の重要性として、情報・行動・心理・社会・医療接続という5つのギャップをテクノロジーとサポートで埋め、孤独感や不安を解消する試みの必要について具体的な方法論について説明があった。

これからは、DTCとPSPを点の施策として捉えるのではなく、患者ジャーニー全体を支える面の設計として考える必要があり、認知・検索の段階では、DTCや疾患啓発により、症状や疾患に気づく支援が必要であり、相談・受診の段階では、適切な受診や医療者との接続を支援する。診断・治療開始の段階では、情報提供や意思決定支援により、患者の治療を理解し納得できるようにする。更に治療継続の段階ではPSPが重要になり、服薬、自己注射、症状管理、生活の中での治療実践を支える必要がある。さらに生活・QOLの段階では、家族、地域、就労、経済負担などの支援も必要であり、最後に、RWD、PRO、VOCを通じて価値を測り、改善することが求められることの解説があった。

【第二部】ラウンド・テーブル・ディスカッション

参加者を3つのグループに分け、3人の講師が各グループをラウンドして質問を受け付ける初の試みであった。特別講演では聞けない踏み込んだ質問が各講師に投げかけられ、中身の濃い議論が各グループで展開された。参加者からは収穫の多い企画であったとの評価が寄せられた。

閉会の挨拶:秋和 真一 氏(名誉顧問)

医薬疾患と分かれば対応ができるが、認識ができないと対すらできない。自身の疾患に気が付く事すらできず、歳を重ねたご友人を引き合いに出し、疾患啓発が担う重要性と可能性について閉会の辞が述べられた。

情報交換会

定例会終了後には記念撮影が行われ、その後お店に移動して情報交換会が開催されました。多くの会員が参加し、当日の講演やラウンド・テーブル・ディスカッションの内容、さらには最近の製薬業界の話題について活発な意見交換が行われました。  

記録:理事会聴講録係