第29回定例会 議事録

疾患啓発(DTC)研究会 第29回定例会
2025年11月20日 開催

2025年度第29回定例会は、興和株式会社様より会場提供をいただき12社26名の参加を得て盛況のうちに開催されました。今回の研究会のテーマは、「Patient Support Program (PSP)」が取り上げら、その目的は、疾患啓発により受診・診断・治療に入った後、患者さんが治療を継続するためにどのような患者サポートプログラムが必要かを考え、DTCからPSPまでを一気通貫で思考することの重要性を確認しました。

◆特別講演:Patient Support Program(PSP)の現状と未来 ~実際のPSPの事例とともに~◆

一般社団法人 ヘルスケアイノベーション協会 代表理事 大角 知也 氏 

                       看護師 金井 彩子 氏 

製薬企業の使命は、良い薬を作るだけでなく、出来上がった薬を患者さんに届けること、またQOL向上や治療継続をサポートすることであり、同じ薬でもサービスを変えることで治療効果や副作用が変わるというエビデンスが紹介された。生活習慣病からスペシャリティ医薬品へのシフトに伴い、診断や治療の難しさが増加している。これにより、今後は薬剤そのものに加えて、PSPといった「こと」(サービス)の提供が不可欠となる展望が示された。医療現場では、病院の赤字化、看護師の離職率の高さ(特に中堅層の不足)、そして医師の働き方改革によるタスクシフトが深刻化している。その結果、医療従事者が患者さんへの十分な教育や指導の時間を確保できず、患者さんは副作用や生活の悩みを相談できる相手がいないという不安を抱えており、これがアドヒアランス(服薬遵守)の悪さにつながっている。

2019年2月のグレーゾーン解消制度の回答により、PSPが医師法第17条(医行為)に違反しないことが明確化されたことが言及された。実施可能とされる内容の例として、①生活習慣のサポート、②高額療養費制度の説明、③服薬状況の確認、投与スケジューリングの作成などである。PSPがもたらす価値と事例として、①製薬企業は、早期診断・投与期間延長・治療効果と売上・データの蓄積、②医療従事者は、チーム医療の促進・院内の負担軽減、③患者・社会は、QOL向上、医療費の削減が期待できる。最後に海外事例、国内事例、PHR(Personal Health Record)事例を共有した上で、失敗するPSPの特徴(設計ミス、運用ミス)と成功の鍵(医療従事者との連携、キーパーソンの育成、継続の仕組み)について説明がなされた。

◆グループワーク:治療継続支援プログラムを策定する◆

本研究会定例会の看板プログラムであるグループワークは、参加者が4つのグループに分かれ、小児喘息を題材とし、吸入療法(ディバイス)の治療継続率が低いことから患者サポートについてグループ討議が行われた。総括として大角氏より、従来リアルワールドデータとして存在しなかったPRO (Patient Reported Outcome) やPHR (Personal Health Record) のデータが集積され、それを元に製薬企業は戦略を練り直すPDCAサイクルが可能になる点が言及された。

情報交換会

定例会が終了し記念撮影のあと、お店に移動して立食形式での情報交換会が行なわれました。本会にも演者を含めて多くの会員が参加し、本日の講演やグループワークの内容、DTCとPSP、そして昨今の製薬業界の話題で大いに盛り上がりました。

記録:理事会聴講録係