◇◆ 医師から見たDTC ◆◇
アッヴィ合同会社
医学統括本部 メディカルアフェアーズ 兼 神経感染症領域部
統括部長 三上 修 氏(医師、医学博士)
DTCが疾患啓発活動の一環として健全に行われるためには企業が高い倫理観とコンプライアンスに基づいた行動が前提として必要である。
三上氏が実施した医師や薬剤師を対象としたアンケートではDTCによる疾患啓発の印象は全体的にポジティブな回答が多く寄せられた。しかしながら、DTCは疾患の理解を促進させる一方、治療の必要のない人の受診増に繋がる可能性もある。
DTCによる疾患啓発には大手総合広告会社も注目しており疾患啓発プランニング支援システムなどのサービス提供を2011年から始めている。
昨今の製薬企業のDTC事例を振り返ってみると、適応症と合致しない効能効果を訴求するものや自社データに基づいた表現方法に指摘を受けたものもある。
こうした事例には各専門医の学会や社会からも問題視する声が上がっている。
特に競合企業が存在する場合は、中立かつ公正なDTC疾患啓発活動は難しい。
三上氏の私見としてDTCによる患者さんの受診促進と既に薬物治療を行っている患者さんへの疾患啓発については切り分けて考えるべきである。
また、現在中立かつ公正な運用のために外資系製薬企業を中心にMedical AffairsとMedical Science Liaison (MSL)を積極的に擁する企業が増え、セールス部門とメディカル部門を分けて役割を明確にするように組織が変化している。DTCを行う際には社内でもセールス部門とは独立した他の組織の審査の目が入ること、または社外の第三者の視点も入れての審査を検討していくべきであると考える。